義経は、子ぎつねにいいました。「人々のいのちをすくうためとはいえ、
おさないそなたから、たいせつな親をうばってしまい、
かわいそうなことをしてしまった。
親をおもうこころは、人間もきつねもかわるものではない。」
「そなたは、なんどもあぶないところをすくってくれた。
都では、静御前によくつくしてくれた。お礼にこの初音の鼓をあたえよう。
きっと、鼓にやどる両親のたましいも、よろこんでくれることだろう。
そして、その人間の武将に、まさるともおとらない勇気に、
わたしの名から源九郎をあたえよう。」
「これからは、源九郎狐となのるがよい!」
子ぎつねは、うれしくて、うれしくてとびあがってよろこんでいます。
鼓をだきしめながら、「おとうさま、おかあさま、またむかしのように、
いっしょにくらせるのですね。
義経さまのありがたい名をいただき、わたしはしあわせものでございます。」
そういって、義経と静御前が見まもるなか、
源九郎狐は、初音の鼓をしっかり手にもち、夜空をとんでふるさとへと
かえっていきました。
それから源九郎狐は、ふるさとのやまとの国で、
神通力でよみがえった両親といっしょに、
いつまでも、いつまでもなかよくくらしました。
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