義経たちは、頼朝のきびしい追手からのがれるために船で九州へ
むかおうとおもいましたが、とちゅうではげしい嵐にあってしまいました。
これでは海にでることはできません。
しかたなく吉野山にすんでいる、川連法眼(かわつらほうげん)という、
えらいお坊さんをたよっていくことにきめました。
そのころ都では、静御前が義経のむかえにきてくれることを、
くる日もくる日もまちわびていました。
ある日、 義経が吉野山にかくまわれていることを知り、
はやくあいたくて、いそいで都をたびだってきました。
もうここは、吉野の山のなかです。うつくしい桜がまんかいに
さきほこっています。
でも、静御前のこころのなかは、いとしい義経のことでいっぱいです。
ふと気がつくと、いっしょに来たはずの忠信がいません。
静御前は、きゅうにこころぼそくなり、
初音の鼓をとりだして、うたいはじめました。
鼓をポン!と打つと、どこからともなく、
たびすがたをした狐忠信があらわれました。鼓の音にあわせて、
たのしそうにおどっています。
ときおり見せる狐のしぐさに静御前は少しも気がつきません。
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