そんなときに、義経をたずねて、佐藤忠信がやってきました。

義経は、ひさしぶりに静御前にあえるとおもい、よろこびましたが、
どこにもすがたが見あたりません。

「そなたにあずけた静御前は、どこにいるのか?」ときくと、
「わたしは一年ぶりに、ふるさとからもどってきたばかりで、
静御前さまを、おあずかりしたおぼえはありません」といいます。

家臣たちが、「もしや、頼朝にひきわたしたのか!」とつめよると、
「とんでもございません、わたしは、殿がこちらにいることを初めて知り、
いそいでかけつけたしだいです」とひっしです。

どうもはなしがかみあいません。
するとふたたび、「静御前さまとおともの佐藤忠信さまが
おいでにございます」とつげられました。

おどろいたのは、ほんものの忠信です。
「わが名をかたるのはなにものだ!」と刀をとってみがまえました。
静御前はうれしさをかくしきれずに、いそいそとやってくると、
ここにも忠信がいるので、びっくりしてしまいました。

「どうやら、忠信がふたりいるらしい、ともをしてきたものがあやしければ、
これでうちすてよ」と、義経から刀をわたされました。



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